|
|
Q7.娘にモンテソーリ・スクールはどうでしょうか?
(7歳女児の保護者の質問)
|
娘のことで何か役立ちそうなアドバイスをいただきたく思っています。P子は現在7歳ですが、今かかっているセラピスト(サイコロジスト)から場面緘黙の診断を受けました。学校では、同級生とおしゃべりしませんし、授業中も発話しません。人数が多くなると圧倒されてしまうようです。クラスのお友達には娘の気持ちを察して、仲間として受け入れてくれている子たちもいるのですが、休み時間は一人でいることが多いようです。
先生との関わりにもやはり難しさがあります。例えば、ちょっとしたメモを担任の先生に直接手渡すことさえできず、先生が来る前にメモを先生の机の上に置かないといけません。
授業中にトイレに行くのも問題のひとつで、先生に許可を得るくらいなら、我慢しようとします。 漏らして帰ってきたことが数回あり、尿路感染症にかかったことも1度あります。知らない人や初めての人、それから人数が多い集団の場面では、人と気楽にやり取りできず、発話もできません。
娘が安心できるのは、自分の家族(姉と妹がいます)、祖父母、私の姉(妹)、義理の兄(弟)、それとわが家のお伝いさんです。内輪では、同年代の子と全く変わりのない、どこにでもいる元気な子です。4歳半の妹とは特に仲がいいですが、妹はとても社交的な子なため、慣れない社会場面では、安心のために妹にいつもくっついています。
言葉が出るのが遅かったため、2歳頃に言語療法士に見てもらいました。発する言葉は、ママやパパというような言葉だけで、自分が思っていることを話そうとすることはほとんどありませんでした。とても頑固で、自分の要求が受け入れられないと、床に寝そべってみせたりしました。おそらく私たちの注意を引くための行動だと思っていました。ほぼ1年間言語療法に通った後は、言葉が目覚しく発達し、発作的な怒りも落ち着いてきました。しかし、依然として極端に引っ込み思案で、内輪以外の人とは話しませんでした。それで、あるサイコロジストにのところに通い、まず1対1のセラピーから始め、それからグループでのセラピーを受けました。P子はそのグループでは話すことができ、楽しんで参加することもできるようになりました。この頃、プレスクールに参加するようになりましたが、そこではかなりくつろいだ様子でした(まだ引っ込み思案でしたが)。クラスの人数は最大でも15名でしたし、この頃の活動はとても簡単なもので、ほとんどが遊びでした。5歳の時にそのセラピストが米国に移住することになりましたが、その時によいセラピストが見つけられなかっため、P子のセラピーは一旦終了となりました。
娘は現在1年生ですが、今通っている小学校の環境に、うまく対応できていないと感じています。1クラス50名で、1学年200名もおり、毎年全児童でクラス替えがあります。5ヶ月前から、別のサイコロジストのところで週一回の遊戯療法を受け始め、学校には、ほぼ全員の先生方に娘の行動を理解してもらえるようにお話ししました。それなのに、娘に無理に発言させようとするひどい先生方が未だにいます。娘にとって、これは大変な心の痛手です。今年度、一週間もの間、P子は泣いて学校に行きたがらないことがありました。なぜ行きたくないのか話してくれませんでしたが、ある先生が娘をひどく当惑させるようなことを言ったことを、後になってクラスメイトを通じて知りました。その先生は、クラス全員の前で、娘のように話し方も分からない子どもになってはいけないと言われたそうなのです。娘はかなり傷ついたようなので、私はその先生に話しにいきました。そして現在、夫と私は、もっと小人数の学校を真剣に探しています。転校する方が、娘の気も晴れて、自分の殻から抜けだすためのきっかけを与えてくれるのではないかと思うのです。
私たちは今、あるモンテソーリ・スクールに着目していています。この学校では通常1クラスが多くても25人ですし、こちらの先生方の方が娘をもっと理解してくれそうに思います。現在かかっているセラピストからは、学年末までに話せるようになる可能性もあるので、転校はそれまで待った方がよいのではないかと言われました。しかし、娘の行動とこれまで私が見てきた経過から考えると、それは不可能でしょう。ほぼ間違いなく、私たちは娘を転校させることになりそうです。私たちは今回の決断ついて娘とも話し合ってみたのですが、娘はきっぱりと今の学校にいるより、モンテソーリ・スクールに行きたいと言いました。私たちがしていることは間違っていないでしょうか。娘への対応について何かアドバイスをいただけたら幸いです。娘は、家ではとても表現力豊か、明るくてやんちゃな女の子です。
|
|
(エリザ・シポンブラム博士の回答)
お手紙の文面から、娘さんへの対応についてご自分でしっかり把握しておられるように感じました。まずお漏らしについて一言お話しすると、これは場面緘黙の子どもにはよくあることです。場面緘黙の子どもたちはトイレに言ってもいいか聞けないし、それこそ我慢の限界までおしっこを我慢してしまうためです。あまりにも長時間尿を溜めていると、文字通り尿が膀胱内にもどる「逆流」を起こしてしまい、尿路感染症になることがよくあります。水腎症を引き起こす恐れもあります。担任の先生に頻繁にトイレに連れて行っていただくようにお願いする必要があります。
小人数のモンテソーリ・スクールは娘さんには素敵なアイデアですよね。私はお母さんに賛同いたします。ご存じのように、場面緘黙の子どもたちは少人数で、形式張らない授業の方がずっとうまくやれます。その理由は到って明白でしょう。ぜひその私立校を選択され、娘さんとそちらへ頻繁に足を運び、学校に慣らしてあげるとよいと思います。
周りに人が少ない時に学校にいっしょに行って、まずは学校という場所で心地よく過ごせるようにしましょう。それから、新しい学校で会話を促していきます。これを転入するまで続けましょう。他にも、転入先の校長先生と交渉して、新学年が始まる前に他の子ども達と会う許可をいただくのはどうでしょうか。保護者の方々に連絡して、新しいお友達と遊ぶ日を設けましょう。こうして、学校が始まる前に他の子どもたちと親しくなり、その子達ともう話しておくようにします。それから、その会話を新しい学校内へと持ち込みます。
信じられないかもしれないですが、全く新しい環境(学校)に転校することで、娘さんが話し始めるようになる可能性もあります。私はそういうケースを数多く見てきました。その主な理由は、初めて会う子どもや先生は、彼女が喋ったとしても何とも思わないからです。ところが、今いる学校では、おそらくみんなが娘さんを注目するでしょう。まさに緘黙児にとっては「最も起こってほしくない出来事」です
。
|
|
|
|