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 SMG~CAN(米国)Q&A


(4歳女児の保護者の質問)

 4歳の娘についての心配事とゾロフト(SSRIの一種)の投与量について2〜3週間前にメールを差し上げた者です。さっそくご返信ありがとうございます。娘の医師は最初10mg(0.5ml)から始めましたが、2、3日後に副作用(不眠、神経興奮など)が出たため、半分の5mg(0.25ml)に減らしました。低量からゆっくりと始めるというエリザ先生の方針に納得し、娘の医師と相談しました。

 医師は、親と連携しながら納得のもとに進めることに同意してくださいました。私達は1月にサンディエゴで開かれた会合に参加したのですが、残念ながら、その時のエリザ先生の講義をちゃんと記録しておりません。以前にもどこかで先生が書かれていたようには思いますが、我々がどのくらいの量の服薬を進めていけばよいか、具体的な指針をお示しいただけるとありがたく存じます。例えば、何日後にどれくらい増量すればよいのでしょうか。また、どんな要因に基づいて最終的な投与量が決まるのでしょうか。娘の医師から1回25〜50mgの投与になると言われましたが、これはエリザ先生がかなり多量とされる量です。

 私達は親として、娘の健康管理に最終的な責任がありますが、専門家とやっていく上で、専門家たちや彼らのアドバイスに対して敬意を欠くことなく、自分たちが主導権を握られる最善の方法があればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

  



 娘さんの薬物治療の目途が立ちつつあり、カリフォルニアのカンファレンスに参加された時の知識を生かそうとされていることをお聞きして、大変嬉しく思いました。薬剤のデータ表や処方方法を示して、娘さんのお薬の処方についてお力になりたいところなのですが、残念ながらそれは不可能です。というのは、私は経験に基づいて治療を決めているからです。

 ゾロフトの投与量は 2.5 mgから 25mgまでです。私は、子どもの体重によって通常は1.25 mgか2.5mgから始め、その後は副作用の出方によって量を決めています。投与期限枠などは設けず、副作用の出方やコミュニケーション不安治療における反応に気を配ります。つまり、他の方法を併用しながら 5 mg ですばらしい前進があれば、お薬は増量しませんし、改善がほとんど見られなくても、副作用がある場合は増量しないのです。

 薬の投与計画表があれば安心ですし、やりやすいでしょうが、私がそうした計画表は使わず、経験に基づいて処方を決めていることに、あなた方も気付かれていることと思います。

 しかし、私はこれまで2.5 mg 以上の増量をしたことは一度もありません。それはなぜかというと、2.5 mgならば、副作用が出た場合、減量しても現状のままでもどちらでもよい量だからです。2.5 mg 以上増量して副作用が出た場合は、副作用はより強く、それを抑えることがより難しくなります。

 投与量の調節に関して:投与期間は耐性と改善の度合いによりますが、1週間から数ヶ月です。子どもにSSRIを投与する場合は、十分に注意しながら慎重に処方します。私はこれまで、SSRIとは別タイプの薬を使う必要性や使用したいと思ったことはありません。

 また、薬は症状の改善に大いに役立つでしょうが、子どもと取り組むうえで、コミュニケーション不安治療こそが重要です。同時に、場面緘黙をコミュニケーションにおける不安ととらえ、(発話だけでなく)子ども全体をとらえて対応していくこと、また、子どもの実際の生活の場でその子を支援することが大切です。

 薬の服用のみの場合、子どもがコミュニケーションを通した対処法や改善の仕方を習得しない限り、行き詰まってしまいます。保護者や教師は、子どもがコミュニケーションを通じて前進するよう支援してあげましょう。どうか、コミュニケーションを通した改善を支援してくれる人と一緒にこの問題に取り組んでください。これは、子どもが治療から最大限の利益を得るため、そして最終的に薬を止めた時に、必要な対処スキルを身につけているためには必須なのです。


(訳者注)年令、薬の効き目、不安の高さによって異なるが、ゾロフトの通常の処方量は5 mg 〜25 mg/1日。
2.5 mg〜5mgから開始し、2〜4週間ごとに1.25 mg〜2.5mgずつ増量。
6歳〜12歳なら最大量10mg(13歳以上なら最大量15〜20mg)まで。
この最大量をこえて処方することになる場合もまれにある(E. Shipon-Blum(2006)Medication in the Treatment of Selective Mutism CD-RomのPDF Handoutsより要約




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