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 SMG~CAN(米国)Q&A

Q7.セロトニンの欠乏は遺伝しますか?
5歳女児の保護者の質問

 場面緘黙と診断された5歳の娘がいます。園の環境に適応するにはまだ早いのではないかと現在まだ入園させずプレ幼稚園に通っています。園では話さないだけでなく、大きな音や大勢の集団に圧倒されてしまいます。これまでにご褒美で行動を強化するセラピーをしてきましたが、最近になってオーディオ療法も受け始めました(いくらか効果が見られます)。

 お薬を用いるのは、セロトニンの欠乏を補うためだということを読みました。全く同じ目的で、私 自身がホルモンの分泌不全から、サラフェム(SSRIの一つ・フルオキセチン塩酸塩・日本では未承認)という薬を飲んでいます。この薬はごく最近飲むようになったのですが、明らかに不安レベルが下がってきました。私はずっと不安の問題を抱えてきましたが、これまで話すことに関しての問題はありません。

 さて、私からの質問ですが、セロトニンの欠乏は遺伝しますか。実は、私も夫も娘にお薬を飲ませることにずっと反対してきましたが、私自身のサラフェムを飲んだ体験から、考えが変わってきました。




 (エリザ・シポンブラム博士の回答)

 どうか順を踏んでお子さんに対応してください。他にできそうな支援や治療を十分に行う前に、お薬に飛びつくべきではありません。いただいた質問ですが、まずあなた自身が十分に場面緘黙や不安障害についての情報を得ることが必要ではないかと思いました。SMG~CANサイト、特に他の「Ask the Doc」の質問と回答集を読むことをお勧めします。それらを読むと、セロトニンと不安との関係が理解できると思います。

 ご存知のように場面緘黙は不安障害の一つですが、不安障害はセロトニンが低レベルであることと関連しています。そのため、セロトニンを補いそのレベルを上げることが、場面緘黙症状などの不安症状の緩和に役立つのです。

 さらに、ご質問の中で、お子さんが大きな音や大きな集団に対して敏感であることが書かれていました。これは文献にはあまり掲載されていないことですが、私は場面緘黙(不安)には感覚統合の問題が大きく関連していると感じてきました。ちょうどこの問題に関する研究を計画しているところです。「低レベルのセロトニンと、感覚の問題が関連している場面緘黙児がいるのではないか」というのが、これまでの私の臨床経験から導かれた理論ですが、多くの場面緘黙児がセロトニンが低レベルであるために、感覚の入力を十分に「遮断」することができないのではないかと考えます。セロトニンを補うと、場面緘黙症状と感覚の問題を治療できる場合が多いです。これまでこのようなことを臨床の場で何度も経験してきました。お子さんに感覚統合障害がないか確認するために専門家に詳しく見てもらうことをお勧めします。場面緘黙症状だけでなく他の症状を持つ場合、お子さんにとって最適な治療計画を立てるためにはその専門で訓練を受けた臨床家に十分評価してもらうことが必要です。



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