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 SMG~CAN(米国)Q&A

Q4.男子児童の進級を1年遅らせるべきでしょうか
   
(6歳の男子について教師の質問)

 ここ3年間学校で全く言葉を発していない6歳の男子児童がいます。自宅や親戚宅ではずっと喋っています。本人は母親に、学校では話さないと言っているようです。このようなケースは本当に場面緘黙なのでしょうか。彼はよく遊び、走り回ったり、笑ったりしますし、発話以外はすべて他の子と同じです。みんなと仲良くやっていますし、担任の先生のことも好きなようです。

 彼は甘やかされているだけなのではないでしょうか? 彼が家で話すのを録音したテープを聞きましたが、かなり家庭をしきっているように感じました。家では言いたいことを言い、したいことをしているのが、このテープを聞くとわかります。彼は1日学校にいても、その間ずっとトイレに行きませんが、トイレの失敗もありません。教師として大変悩んでいるのですが、実際、彼をうまくテストすることも出来ないのです。彼は他の児童よりも随分遅れをとっています。進級を1年遅らせるべきでしょうか? どんなことでも、アドバイスいただければありがたいです。




 先生が困っておられる様子は私にもわかるのですが、率直に申し上げると、ご質問の多くが漠然としすぎていて、はっきりとはお答えしにくいです。「このお子さんが場面緘黙かどうか」という質問ですが、これは、そうだと思います。先生が書かれた特徴の多くが場面緘黙児の特徴と類似しています。緘黙児の多くは、家では自己主張が強く、騒がしく、非常におしゃべりです。… 「仕切っている」ことに関してですが、場面緘黙児は意志が強く頑固な他の子どもとなんら変わりはありません。多くの場面緘黙児が、学校ではトイレを我慢します。これは、「トイレへ行っていいですか」と聞けないことと、トイレに行くことで他の子どもから注目されるのが怖いからです。また、学校では食事をしない子どもも多くいます。これも注目されたくないからです。

 「甘やかされているのではないか」ということに関しては、何を意味しているのかはっきりしません。「甘やかされている」とは、なんでも与えられている子どもを示す時に用いる曖昧な用語だと思います。観察者が誤って解釈し、全く異なる状態に対してこの用語を用いている場合がほとんどです。

 次に「進級を遅らせるべきか」というご質問ですが、この質問にはお答えすることはできません。確かに場面緘黙児をテストするのは難しいですが、大多数の子どもは頭がよく、学年相応のレベルか、もしくはそれ以上です。もしも、学力が年齢基準に達していないと思われるなら、言葉を用いないアセスメントを用いるとよいでしょう。ただし、この場合も、多くの場面緘黙児が、不安のために検査で持っている力を出し切れないことに、注意してください。

 ほとんど言葉を使わず、検査しやすく、子どもも楽しんでやれそうな発達検査の一つにブラッケン発達検査(訳者注)があります。学習に対するレディネス(準備状態)と学力に関して得点化されます。子どもとすでに関わりのある人が検査を行うことをお勧めします。

(訳者注)ブラッケン発達検査は日本では用いられていない。発話が必要ない検査として「絵画語い検査」がある。



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