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 SMG~CAN(米国)Q&A

Q1.不安障害の治療にCESまたはEMDRを使われたことがありますか?

(8歳男児の保護者の質問)

 先生は、不安障害の治療にCESまたはEMDRを使われたことがありますか? 8歳の息子はプロザック(SSRIの一種。日本では未承認)を服薬してかなり改善し、現在減薬中です。息子のセラピストは、感覚統合障害が専門で、脳内物質セロトニンの生産を刺激できるCES (頭蓋電気刺激療法:Cranio-Electrotherapy Stimulation)の施術経験があります。地元の他の精神科医二人もCESの効果を立証しているため、息子の精神科医の指示により、セラピストからCESを受ける予定です。

 また、私の友人の心理士は、EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing;眼球運動による脱感作および再処理法)の研究をしていますが、EMDRはPTSD(心的外傷後ストレス障害)だけでなく、不安障害の子どもに対しても短期治療で効果があると聞きました。1998年から行われているいくつかの研究がこのことを立証しているそうです。EMDRを施行するセラピストは、必ずEMDR協会の訓練を受ける必要があり、また、その訓練で会得した子ども向けの特定技術にて、大人への治療とは異なる形でEMDRを施行する必要があるそうです。




 コメントをありがとうございます。EMDRのことはよく知っています。創始者のフランシーン・シャピロ女史とは昨年何度か連絡を取り合い、特に不安障害や場面緘黙の子どもについて彼女と話し合いました。緘黙の発症にトラウマが関連しているお子さんには、私もEMDRをお勧めしてきました。

 しかし、EMDRは大人に対しては非常にうまくいくのですが、子ども、特に幼い子どもに対してはなかなかうまくいかないのです。ご存知の通り、EMDRの背景にある理論では、素早い目の動き(通常は左右交互に点滅する光を見る)を通じて、頭に浮かぶ考えに対して、不快な感情の動きや身体的兆候が生じないように、脳の状態を保つことが可能になります。つまり、脳が記憶や情報を再処理するためには、「集中」することが必要なわけです。訓練されたEMDR専門家の多くが、ある特定の事象を少しずつ段階的に、患者に体験させる方法をとるのですが、幼い子どもの場合は、目で光を追うどころか注意を保つこと自体が難しいようです。ここでは、EMDRについてお薦めの本を2冊ご紹介いたします。

(1)シャピロ F.(著) 市井雅哉(監訳)2006『EMDR−外傷記憶を処理する心理療法』二瓶社
(2)Ricky Greenwald 1999:EMDR in Child/Adolescent Psychotherapy, Jason Aronson Inc





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