かんもくネット SMG~CAN(米国)Q&A  

   
 
Q5.トイレの自立の問題に取り組む前に、行動療法を行うべきでしょうか?
   (4歳女児の保護者の質問)

 11月に5歳になる娘がいます。軽度の場面緘黙で、お友達や、若い補助の先生、友達の親などの幾人かとは自由におしゃべりしますが、年配の先生、祖父母、叔父叔母など、他のほとんどの大人とは話せません。それと娘はまだオムツがとれていません(トイレット・トレーニングをいやがり、一度もトイレに行ったことがありません。本人はしないと言っています)。

 3ヶ月前からセラピーを受けていますが、セラピストからは次の段階としてプロザック(SSRIの一種。日本では無認可)を試したいと言われました。しかし、娘の年齢を考えると、本当に薬が必要なのか悩んでいます。娘は発話やトイレット・トレーニングを迫られない限り、とても楽しそうでリラックスしています。セラピストは、お薬を飲んだ方が、短期間でスムーズに治療を進めることができると考えているようです。もちろん、我々もこれから少しずつ前進させていくつもりですが、できればゆっくりと他の行動療法にも試みながら進めたいと思っています。アドバイスをどうぞよろしくお願いいたします。



 (エリザ・シポンブラム博士の回答)

 娘さんの詳しい状態が把握できていませんので、娘さんの場合どうなのかお話できませんが、同じくらいの年の子ども達をたくさん診てきた経験から申し上げますと、やはりお薬は、治療の進行速度を絶対的に速めてくれることは確かです。

 娘さんは、発話を迫られなければ、不安そうに見えないと言われていますが、場面緘黙の子どもが必ずしも不安そうに見えるわけではありません。彼らの緘黙は、不安を示す1つの形です。お子さんが場面緘黙ならば、気楽そうに見えたとしても、不安であることに違いはありません。

 また、娘さんのオムツがまだとれていないとのこと。私は日頃「子どもに無理強いしない」ことを皆さんに勧めてはいますが、お子さんはもうすぐ5歳です。医学的原因(または心理的原因)がない限り、5歳でまだオムツをする理由がありません。トイレット・トレーニングがなかなか進まない原因として、間違いなく「不安」があげられます。トイレの問題を抱える場面緘黙の子どもは、お薬でずいぶんよくなるケースが多くあります。場面緘黙の子どもの大部分が社会不安を持っており、中には「トイレ不安(Paruresis)」「シャイ排泄関連症候群」といわれる症状をもつ子どももいます。

 多くの場面緘黙や社会不安の子ども達に、このような症状があること、また、これは社会不安の一症状だということが、最近わかってきました。おそらく娘さんのオムツがとれないのは、「トイレ不安」が関係している可能性があります。行動療法と薬物療法が有効でしょう。